いきなりですが、次の計算問題を10秒以内に解けますか?
0.125×0.375÷0.75
中学受験で一番差がつくといわれている教科は算数です。そして、多くの受験生が一番苦戦するのも算数です。だからこそ差がつく教科なのです。なので、「算数ができない!」という声は受験生からも、その親御さんからもよく聞こえてきました。
しかし、「算数ができない!」と一口に言っても、実はできない原因は多岐にわたります。そのため、ある子には有効だった対策が、別の子には全く役に立たないということもあります。中学受験算数は奥が深いのです。今回は、算数ができない原因について、考えていきます。※長くなるので5回に分けます。
ベースとなる計算の仕方や知識を知らない
四則演算と基礎知識
大人が言いたくなるのは、「計算問題ぐらい正解させなさい」という言葉です。しかし、中学受験算数においては「たかが計算、されど計算」と言えるぐらい、計算問題も奥が深いです。さて、一番上で紹介した問題です。10秒以内で解けたでしょうか。
0.125×0.375÷0.75
中学受験をしているか、そろばんが得意な方でないと厳しいかと思います。そうでない方はまず筆算をするかと思います。3桁×3桁の筆算、時間がかかりますね。桁数が増えるので、その後の割り算も面倒になります。時間さえかければ誰でも解ける問題を、いかに短時間でスマートに解くか。そこに中学受験の計算問題の奥深さがあります。
上記の問題は、小数を分数に変換することで簡単に解くことができます。
0.125×0.375÷0.75
=1/8×3/8÷3/4
=1/8×3/8×4/3
=1/16
0.125が1/8になるとどうして分かったのか?と気になりますね。覚えるのです!間違っても125/1000を約分してはいけません。余計に時間がかかります。
覚え方は以下の通りです。
暗記! 1/8 4姉妹
1/8=0.125(イニ子)
3/8=0.375(ミナ子)
5/8=0.625(ムニ子)
7/8=0.875(ハナ子)
これらをの知識を覚え、それをどこで使って楽をするかを考えて解いていきます。計算問題といえども奥深く、面白いと思いませんか。お子さんが中学受験のテキストをお持ちでしたら、ぜひ一度ご覧になって、一緒に考えてみてください。
□を求める計算
中学受験塾ではだいたい4年生で学習します。以下のような問題です。□に入る数を求めます。
64÷(□-1)+4=36
大人から見ると、ただの方程式です。□をxに変えればそのまま中学1年生の教科書に載せられます。これを小学4年生が解くわけです。多くの子が苦戦しますが当たりですね。ちなみに例として挙げた問題はかなり簡単な部類に入ります。実際はここに小数や分数が入ったり、式の長さも3倍以上になったりします。
この問題を解くために必要な知識は次の2つです。
1.通常の四則演算の優先順位を知っている。
2.逆算の方法を知っている。
四則演算の順序は、当然( )の中が先、次が×÷、最後が+-です。これをただの記号ととらえず、数と数をくっつける接着剤としてとらえます。そして逆算では、接着力の弱いもから順にはがしていくイメージを持ちます。
64÷(□-1)+4=36
64÷(□-1)=36-4=32
□-1=64÷32=2
□=2+1=3
1行目から2行目までは単純に足し算の逆で引き算をすればいいのですが、2行目から3行目に進む時が厄介ですね。割り算と引き算には順番があります。求めたい数が÷の後ろにある場合は、単純に逆算して32×64とすると間違えますね。この場合は求めたい部分、今回は( )の部分を隠すと式が出来ます。64÷と=の右側の32がくっついて64÷32で求められます。引き算も同様です。
ルールが飲み込めたら、あとは練習あるのみです。意識せずとも解けるようにしましょう。文章題を解く上で何度も使うことになります。
単位変換
ここも重要な知識であり、覚えていないがゆえにいつまでも苦手として残る部分です。6年生でも単位変換は苦手という子は見られます。
鷲のマークの大正製薬から出ている、ファイト一発でおなじみのリポビタンD。タウリンがなんと1000mgも入っています。
しかし、これをg単位に直すと、1000mg=1gとなります。
なんだか途端に少なく感じられます。
単位と数字はセットになって一つの量を表します。gはmgよりも大きな単位です。だから「=」を保つためには数字が小さくなる必要があります。ここで覚えるべきは、それぞれの単位が0が何個分異なるのかということです。
m(ミリ):元の単位より0が3つ分小さい
c(センチ):元の単位より0が2つ分小さい
d(デシ):元の単位より0が1つ分小さい
h(ヘクト):元の単位より0が2つ分大きい
k(キロ):元の単位より0が3つ分大きい
あとは㎠と㎡は右肩に「2」がつくので、通常0が2つ分変わるところ、2倍の4こ分変わるということが分かれば単位変換はほぼクリアです。あとは練習あるのみです。
分配法則
これは中学校でも学習することなので、大人にもなじみが深いですね。「( )の中に分けて配る」というだけですが、意外と苦戦する場合があります。むしろ、分配法則の逆の方が分かりやすいかもしれません。
4×3+4×7
=4×(3+7)
=4×10
=40
これの逆だよ、という説明をします。
苦戦するのがマイナスの分配です。多少、中学1年生の正負の数の考え方を使います。
15-(5-3)
=15-5+3
=13
1行目から2行目に進むとき、5に「-」がつくのは分かってもらえますが、なぜ「-3」が「+3」に変わるかが分かりません。順番通りに計算すると、5から3をとって小さくしてから15から引くところ、先に5を引くと引きすぎだから3を足して戻します。「-」に棒がもう一本飛んでくるから「+」になるんだよ、で通すのもありです。
マルイチ算
呼び方は色々ありますが、中身はただの一次方程式です。3xという表現が使えないので、③と表し、①を求めます。ただし、小学生は移項が使えないので、「○の差=数字の差」という法則を覚えて処理していきます。
⑤+12=⑨-8
④=20
①=5
⑤と⑨は単純に差が④と分かります。ポイントは、「+12」と「-8」の差です。片方が12増え、もう一方は8減るので、その差は20となります。
この計算を、文章題や後述する比例式の中で多用することになります。
比例式
中学受験の問題で最も使うのが「比」です。比を制する者が中学受験算数を制するといっても過言ではないくらい重要です。比を使うことで数字がシンプルになり、計算ミスも減り、時間も短縮できます。いいことだらけです。
ただ、子どもの発達段階によってはどんなに頑張っても理解できないことがあります。逆に、放っておけばそのうち理解できることでもあります。小さな子どもは、単位をつけて目に見える量なら認識できますが、何かと何かを比べて出てきた抽象的な「比」という概念はよく分かりません。比を習う5年生ではその発達段階の壁を越えたことまだの子が混在します。多くの子は6年生になるとすんなりわかるのですが。
そのため、5年生のうちはある程度機械的にでも処理できるよう、計算問題として練習しておくとよいです。
比例式の基本は、「内×内=外×外」です。実際は、比例式と分配法則とマルイチ算を組み合わせて使います。
(③+200):(④-400)=2:1
(④-400)×2=(③+200)×1
⑧-800=③+200
⑤=1000
①=200
1行目から2行目に進むときに比例式、2行目から3行目に進むときに分配法則、3行目以降にマルイチ算を使っています。この処理をよどみなくできれば、文章題を解くうえで大きな武器になるでしょう。
今回は、中学受験算数のベースとなる計算や基礎知識のご紹介をしてきました。暗記や練習が必要とはなりますが、一度できるようになってしまえば一気にスピードがアップし、解ける問題も増え、算数が楽しくなってきます。頑張ってください!
